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期間限定薄桜鬼ブログ
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元治元年九月初旬。禁門の変の翌々月です。
千鶴が新選組に来て九ヶ月。15〜16歳くらいに設定してます。
沖田さんは現代の数え方で22歳。1842年誕生説をとってます。
まだまだ千鶴は狩りの獲物です(え)
甘さ控えめですが、それでもよろしければ…///


右下のタイトルからお進みください///
(しかも第一回はほとんど沖田さん出番無しorz)



**********




元治元年、九月

風が変わり始めていた。息苦しいほど暑かった空気に涼やかな感触が混ざっている。朝食後の日課として八木邸玄関先の掃き掃除をしていた千鶴は、心地よさげに目元を緩めて伸びをした。
反り返るようにして空を見上げると、鱗雲が綺麗に並んでいる。
季節はもう秋だ。
気持ちよく吸い込んだ秋の空気を吐きながら千鶴が掃除を再開すると、奧からどたどたという足音が響いてきた。武芸に長けた者たちが集まる新選組の屯所で、これだけの足音を堂々と立てるものはそう多くない。
「ちーづるー! 千鶴っ!」
そのうちの一人が威勢良く玄関へと姿を現した。
「平助君、どうしたの?」
「おー、いたいた。ちょっと広間へ来いよ!」
「えっ、今? じゃあ箒片付けてくるね」
「そんなもんいーからいーから!」
平助はひょいと腕を伸ばして千鶴の手を取り、構わず邸内へと引っ張りあげた。千鶴は「わっ」とか「あっ」とか短い悲鳴を上げながら最低限の抵抗の内に箒を玄関に立てかけ草履を脱いだが、沓脱石に草履を揃えることは敵わなかった。生真面目な彼女の眉間に、微かに困惑の皺が寄る。しかし、いつになく上機嫌な平助の様子に気づいて、千鶴は玄関から平助へと視線を移した。
「何かあったの、平助君?」
そう問われ、平助はただ引っ張っていた彼女の腕を楽しげに振り回した。
「へへー。隊務で江戸に行くんだ!」

広間には新選組幹部の主な面々が集まっていた。近藤と土方、山南が何事かを話し合っている傍に沖田が座り込み、斎藤が控えている。局長副長の話が聞こえる範囲なのだろう、近くの壁には永倉と原田が寄りかかって時折雑談を交わしていた。山崎と島田は不在だ。そして広間の全員が見渡せる場所に井上が座り、いつもと変わらぬ穏やかな笑顔を浮かべていた。
平助が千鶴を伴って広間に入ると、土方がわずかに顔を上げた。
「……連れてくるほどのことはねぇって言っただろ、平助」
「いいじゃんかー、オレだって話があるんだし」
土方の第一声に怯んだ千鶴の両肩を手で押して、平助は千鶴を土方の前に立たせる。千鶴は分かりやすく小さな緊張の息を呑み込んだ。
そんな千鶴の様子に土方は少し肩をすくめ、だが表情を和らげた。
「江戸行きの話は聞いたか」
「はい」
「近藤さんと新八、平助が江戸に発つ。悪いが、今日は巡察には行かねぇで皆の旅支度を手伝ってくれ。女手があった方が、細けぇとこまで行き届くだろ」
「……はいっ!」
大きく頷く千鶴を笑顔で見やった平助は千鶴の袖を引っ張って、原田たちの近くへと腰を下ろした。土方の千鶴への話は明らかに今ので終わりだ。千鶴もそれを承知したようで、平助に逆らわず壁際の輪に加わる。
平助がそこで切り出したのは千鶴の江戸の家がどこにあるのか、という話だった。様子を見てきてくれるという平助に千鶴は喜んで家の住所を告げた。
そのまま、壁際で江戸の話に花が咲きそうな気配が漂ったとき。
「土方さんは過保護すぎやしませんか? 僕が負傷者だって言うなら平助だって負傷者じゃないですか」
刺々しい声が響いて、千鶴は背後を振り返った。
横顔だけでも分かるほどの不機嫌を滲ませた沖田が、こちらも不機嫌に顔をしかめた土方に食い下がっていた。


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