期間限定薄桜鬼ブログ
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※未来捏造(ゲーム終了後約十年)です。
歴史に従って斎藤さんは藤田五郎と名を改めてます。
「東の都、ひかり降る先」のサイドストーリーとして書きましたが
時系列的にはこちらのほうが少し前です。
五郎さんの嫁自慢です。
よろしければ、右下のタイトルよりお進みください///
私信。ご希望にお応えしてこちらも掲載いたしました!
ありがとうございます〜///
歴史に従って斎藤さんは藤田五郎と名を改めてます。
「東の都、ひかり降る先」のサイドストーリーとして書きましたが
時系列的にはこちらのほうが少し前です。
五郎さんの嫁自慢です。
よろしければ、右下のタイトルよりお進みください///
私信。ご希望にお応えしてこちらも掲載いたしました!
ありがとうございます〜///
その晩、寝具の支度をしようとしていた私は五郎さんに呼び止められた。
何だろうと振り返ると、五郎さんは私が置いた夜着の着替えを脇に避け、彼の正面に私の座る場所を作った。真面目な話がある時の彼の仕草だとすぐに気づいて、私も背筋を伸ばして正座する。
私が落ち着くのを見てから、彼は口を開いた。
「──明日、佐川様がおいでになる」
「……佐川様?」
聞いたことのある御名前だ。
「会津藩若年寄を務めていらしたかただ。俺たちの祝言にも来てくださった」
会津さま御自らが上仲人の労をとってくださった私たちの祝言には、畏れ多いことだけど、江戸にお住まいの会津藩の偉い方々もいらしてくださった。その方々の中に、確かに佐川様という御名前もあったと思う。
「……はい。でも、その佐川様が何故ここに?」
「まだわからん。だが、俺に折り入って話があるとのことだ」
「五郎さんに、お話が……」
ということは……。
ちょっと立ち寄るとかそういうことじゃなくて、お話の間にはここにずっといらっしゃるっていうことで……。
──どうしよう。
私は青ざめた。
もう蓄えも尽きかけてて、ろくなご用意ができない…!
「心配するな。こちらの台所事情など、佐川様もご存じだ」
「う……」
言いにくいことを五郎さんが察してくれたのは有難いけど、かと言って状況が改善されるわけでもない。お膳を出すなんてできないし、それどころか……お茶菓子すら難しいかも知れない。
俯き、口元に拳をあてて考え込んでしまう。
もうお米もほとんどない……ああ、米びつに残ってる粉を集めたら何かお菓子を作れないかな。
すると。
ぐるぐると思案が回り始めた頭に、ふと柔らかい感覚があった。
私の頭を五郎さんがそっと、撫でている。
顔を上げると──微笑んだ五郎さんと目が合った。
至近距離で。
深い色をした海のような……。
彼の双眸が穏やかに凪いでいた。
私はこの瞳が好きだった。
いつもは、彼の持つ刀のように研ぎ澄まされた光を放っている瞳が、あたたかく溶けている。
そうさせる彼の心の平穏を思い、私はどうしようもなく嬉しくなるのだ。嬉しくて、例えようもない安堵感に私も溶けていく。
ぐるぐる回っていた思考もすべて飛んでしまった。
だから一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「……おまえは茶を淹れてくれればそれでいい」
「……え?」
耳に入ってきた言葉が理解できなくて、聞き返してしまう。
首を傾げた私を見て言葉が足りないと思ったのか、五郎さんは先を続けてくれた。
「佐川様は、自分が出向いても構うなと奥方に伝えろ、と言ってくださったんだが」
五郎さんは私の頭から手を離し、笑顔を消して目を逸らした。
……あれ? いま何か、心にひっかかる言葉があったような気がするんだけど。
けれどまだ思考の速度が戻っていない私は、ただ五郎さんを待った。
予想よりも一呼吸遅く、彼は先を続けた。
「家内の淹れる茶は美味いので、召し上がってくださいと言っておいた」
「──……え!?」
な、なにかすごい言葉を聞いたのは気のせい?
だって私のお茶なんて普通のお煎茶で、二番煎じも三番煎じもしたりするし、茶道の心得もまったくないんですけど!?
でも、そこじゃなくって……。
か、家内って……。
五郎さんが佐川様に、私のことを「家内」って……。
どんな場面で。どんな様子で。この五郎さんが眼前にいらっしゃっただろう佐川様に私のことを。
そこまで思いを巡らせて、さっき頭に入ってこなかった言葉が意味を持って胸に落ちた。
おくがた。
私のことを五郎さんの「奥方」と呼ばれた佐川様に、五郎さんは私のことを「家内」って……。
そしてお茶を淹れるのが上手い、と。
それって……。
「あ…の……その……え……?!」
言葉にならない。
嬉しいって言うか照れくさいって言うか、……う、うわあ……。
私は思わず両手を自分の頬にあてた。暖房なんてないから両手が冷たい。でも冷たいのが丁度いい。このまま頬の熱が収まればいい。
そんな私の様子をどう思ったのか、今度は、五郎さんは私が取り乱している理由を察してはくれなかった。
微笑みではないけれど、穏やかな表情で私を見た。
「安心しろ。お前の淹れた茶は美味い」
嗚呼そんなにきっぱりと、真っ直ぐに、佐川様にも言ってくれたのだろうか。
「……そうで…しょうか……」
かろうじて返事をした私に、五郎さんはうなずいた。
「ああ。土方さんも良くそう言っていた。おまえの茶は、美味いと」
「……」
息を呑んだ。火照りが引いた。
瞬く間に気持ちが鎮まっていく。
「土方、さんが……」
五郎さんとはまた違った静けさを持った人。誰よりも熱くて、誰よりも静かだった。
五郎さんが、そしてあのひとが私のお茶を美味しいと言ってくれるのなら。
背筋が伸びた。
私の視線は自然と前を向く。
また五郎さんと正面から目が合ったけれども、私は「わかりました」と静かに告げた。
笑顔すら、浮かぶ。
「私に出来る限りの、美味しいお茶を淹れますね」
──そうしてくれと言って。
彼もそっと、笑った。
何だろうと振り返ると、五郎さんは私が置いた夜着の着替えを脇に避け、彼の正面に私の座る場所を作った。真面目な話がある時の彼の仕草だとすぐに気づいて、私も背筋を伸ばして正座する。
私が落ち着くのを見てから、彼は口を開いた。
「──明日、佐川様がおいでになる」
「……佐川様?」
聞いたことのある御名前だ。
「会津藩若年寄を務めていらしたかただ。俺たちの祝言にも来てくださった」
会津さま御自らが上仲人の労をとってくださった私たちの祝言には、畏れ多いことだけど、江戸にお住まいの会津藩の偉い方々もいらしてくださった。その方々の中に、確かに佐川様という御名前もあったと思う。
「……はい。でも、その佐川様が何故ここに?」
「まだわからん。だが、俺に折り入って話があるとのことだ」
「五郎さんに、お話が……」
ということは……。
ちょっと立ち寄るとかそういうことじゃなくて、お話の間にはここにずっといらっしゃるっていうことで……。
──どうしよう。
私は青ざめた。
もう蓄えも尽きかけてて、ろくなご用意ができない…!
「心配するな。こちらの台所事情など、佐川様もご存じだ」
「う……」
言いにくいことを五郎さんが察してくれたのは有難いけど、かと言って状況が改善されるわけでもない。お膳を出すなんてできないし、それどころか……お茶菓子すら難しいかも知れない。
俯き、口元に拳をあてて考え込んでしまう。
もうお米もほとんどない……ああ、米びつに残ってる粉を集めたら何かお菓子を作れないかな。
すると。
ぐるぐると思案が回り始めた頭に、ふと柔らかい感覚があった。
私の頭を五郎さんがそっと、撫でている。
顔を上げると──微笑んだ五郎さんと目が合った。
至近距離で。
深い色をした海のような……。
彼の双眸が穏やかに凪いでいた。
私はこの瞳が好きだった。
いつもは、彼の持つ刀のように研ぎ澄まされた光を放っている瞳が、あたたかく溶けている。
そうさせる彼の心の平穏を思い、私はどうしようもなく嬉しくなるのだ。嬉しくて、例えようもない安堵感に私も溶けていく。
ぐるぐる回っていた思考もすべて飛んでしまった。
だから一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「……おまえは茶を淹れてくれればそれでいい」
「……え?」
耳に入ってきた言葉が理解できなくて、聞き返してしまう。
首を傾げた私を見て言葉が足りないと思ったのか、五郎さんは先を続けてくれた。
「佐川様は、自分が出向いても構うなと奥方に伝えろ、と言ってくださったんだが」
五郎さんは私の頭から手を離し、笑顔を消して目を逸らした。
……あれ? いま何か、心にひっかかる言葉があったような気がするんだけど。
けれどまだ思考の速度が戻っていない私は、ただ五郎さんを待った。
予想よりも一呼吸遅く、彼は先を続けた。
「家内の淹れる茶は美味いので、召し上がってくださいと言っておいた」
「──……え!?」
な、なにかすごい言葉を聞いたのは気のせい?
だって私のお茶なんて普通のお煎茶で、二番煎じも三番煎じもしたりするし、茶道の心得もまったくないんですけど!?
でも、そこじゃなくって……。
か、家内って……。
五郎さんが佐川様に、私のことを「家内」って……。
どんな場面で。どんな様子で。この五郎さんが眼前にいらっしゃっただろう佐川様に私のことを。
そこまで思いを巡らせて、さっき頭に入ってこなかった言葉が意味を持って胸に落ちた。
おくがた。
私のことを五郎さんの「奥方」と呼ばれた佐川様に、五郎さんは私のことを「家内」って……。
そしてお茶を淹れるのが上手い、と。
それって……。
「あ…の……その……え……?!」
言葉にならない。
嬉しいって言うか照れくさいって言うか、……う、うわあ……。
私は思わず両手を自分の頬にあてた。暖房なんてないから両手が冷たい。でも冷たいのが丁度いい。このまま頬の熱が収まればいい。
そんな私の様子をどう思ったのか、今度は、五郎さんは私が取り乱している理由を察してはくれなかった。
微笑みではないけれど、穏やかな表情で私を見た。
「安心しろ。お前の淹れた茶は美味い」
嗚呼そんなにきっぱりと、真っ直ぐに、佐川様にも言ってくれたのだろうか。
「……そうで…しょうか……」
かろうじて返事をした私に、五郎さんはうなずいた。
「ああ。土方さんも良くそう言っていた。おまえの茶は、美味いと」
「……」
息を呑んだ。火照りが引いた。
瞬く間に気持ちが鎮まっていく。
「土方、さんが……」
五郎さんとはまた違った静けさを持った人。誰よりも熱くて、誰よりも静かだった。
五郎さんが、そしてあのひとが私のお茶を美味しいと言ってくれるのなら。
背筋が伸びた。
私の視線は自然と前を向く。
また五郎さんと正面から目が合ったけれども、私は「わかりました」と静かに告げた。
笑顔すら、浮かぶ。
「私に出来る限りの、美味しいお茶を淹れますね」
──そうしてくれと言って。
彼もそっと、笑った。
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家内と言わせ隊隊員!
haluさま!!あぁもう///
最初に読ませて頂いたときも萌え萌えでしたのにさらに萌えが加わっていてもう読みながら顔がやばかったです!(*ノノ)
奥方と家内の言葉がより濃くなっていらっしゃってもうすごいにやにやしてしまいましたv
五郎さんの微笑みとうろたえる千鶴がすごくすごく可愛いです。五郎さんの瞳はいろんな色を持っていそうですね^^*千鶴にだけの色もあるのだろうなぁと思いましたらまたにやにやしてしまいました(*´∀`*)
最初に読ませて頂いたときも萌え萌えでしたのにさらに萌えが加わっていてもう読みながら顔がやばかったです!(*ノノ)
奥方と家内の言葉がより濃くなっていらっしゃってもうすごいにやにやしてしまいましたv
五郎さんの微笑みとうろたえる千鶴がすごくすごく可愛いです。五郎さんの瞳はいろんな色を持っていそうですね^^*千鶴にだけの色もあるのだろうなぁと思いましたらまたにやにやしてしまいました(*´∀`*)
隊員その弐です!
家内サービス当社比1.5倍!(笑)
千鶴うろたえ度合いも大盛り増量中v
にやにやありがとうございますすっごい嬉しいです!!
五郎さんは真顔で妻自慢が出来ると信じてます。後から考えて「あれって妻自慢…」と少しうろたえると良いと思います。
蒼茫は広い海の色で…深いところはすっごい濃い色だったり、浅瀬は透明だったり…基本的には寒色なんですけど、千鶴にだけは温かいといい、そんな妄想です☆///
にやにやありがとうございました!!
千鶴うろたえ度合いも大盛り増量中v
にやにやありがとうございますすっごい嬉しいです!!
五郎さんは真顔で妻自慢が出来ると信じてます。後から考えて「あれって妻自慢…」と少しうろたえると良いと思います。
蒼茫は広い海の色で…深いところはすっごい濃い色だったり、浅瀬は透明だったり…基本的には寒色なんですけど、千鶴にだけは温かいといい、そんな妄想です☆///
にやにやありがとうございました!!
はじめまして。
「アイシス」様のリンクから訪問させていただきました、玖來(くらい)と申します。
斎藤×千鶴、二本とも読ませていただきました!もう、千鶴が可愛くて無意識でデレている斎藤も(あ、藤田ですね…笑)可愛くてカッコよくて、画面の前でついついにやけてしまいました。つつましくも幸せに暮らしている二人の様子が、息づいている新しい生命の息吹がきらきら眩しくて…つい、頬が緩んでしまいます。
個人的に私も、アイシス様のあの絵は大好きでして。本当に二重で楽しませていただきました。
素敵なお話をありがとうございます。
他の作品も、近いうちに読破させていただきますね。
更新、無理ない程度にご自分のペースで頑張って下さい。
斎藤×千鶴、二本とも読ませていただきました!もう、千鶴が可愛くて無意識でデレている斎藤も(あ、藤田ですね…笑)可愛くてカッコよくて、画面の前でついついにやけてしまいました。つつましくも幸せに暮らしている二人の様子が、息づいている新しい生命の息吹がきらきら眩しくて…つい、頬が緩んでしまいます。
個人的に私も、アイシス様のあの絵は大好きでして。本当に二重で楽しませていただきました。
素敵なお話をありがとうございます。
他の作品も、近いうちに読破させていただきますね。
更新、無理ない程度にご自分のペースで頑張って下さい。
ありがとうございます!
はじめまして、玖來さま。ご来訪くださいまして、そして御言葉をくださいましてありがとうございます……!
斎藤/藤田さんは可愛いも装備可能な切れ味鋭い武士、という大変に探り甲斐のある殿方だと思っておりますので、「可愛い」と「カッコよ」い両面の御言葉をいただけて小躍りしております///
つつましくても微笑みを共に交わせること自体が、以前は考えられなかったほどの幸せなこと……そんなきらきらした時代をこの東京の二人には生きてほしいなと願っています。
しかし、兎にも角にもアイシス様のあの絵に魅せられて書かせていただいたものですので、二重で楽しんでくださったとの御言葉が何より嬉しゅうございました……!!
それから、URLをありがとうございました。先程お邪魔いたしましたらブログの解説TOPに「斎藤贔屓」との記述が……そして「はじめに」を拝見しましたらずらりと斎藤さんのお話のタイトルが……!
タイトルを拝見しただけでかなりテンションが上がってしまいました。これからゆっくり拝読させていただきたいと存じます///
玖來さまもどうぞ、ご無理のないようにご活躍くださいませ。この時期、風邪をひきますとほんの少しの油断で冷えて長引くようです。玖來さまのご健勝とご健筆をお祈りしております!
斎藤/藤田さんは可愛いも装備可能な切れ味鋭い武士、という大変に探り甲斐のある殿方だと思っておりますので、「可愛い」と「カッコよ」い両面の御言葉をいただけて小躍りしております///
つつましくても微笑みを共に交わせること自体が、以前は考えられなかったほどの幸せなこと……そんなきらきらした時代をこの東京の二人には生きてほしいなと願っています。
しかし、兎にも角にもアイシス様のあの絵に魅せられて書かせていただいたものですので、二重で楽しんでくださったとの御言葉が何より嬉しゅうございました……!!
それから、URLをありがとうございました。先程お邪魔いたしましたらブログの解説TOPに「斎藤贔屓」との記述が……そして「はじめに」を拝見しましたらずらりと斎藤さんのお話のタイトルが……!
タイトルを拝見しただけでかなりテンションが上がってしまいました。これからゆっくり拝読させていただきたいと存じます///
玖來さまもどうぞ、ご無理のないようにご活躍くださいませ。この時期、風邪をひきますとほんの少しの油断で冷えて長引くようです。玖來さまのご健勝とご健筆をお祈りしております!