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もうちょっと細切れアップで…;
まだ甘くありません。ていうか恋バナに突入してもあまり甘くは…;;;

今回は、斎藤さんの「あんた」呼びは萌える。そんなシーンです。
それだけなんですがもしよろしければ右下のタイトルからどぞ///


そんな、穏やかと呼ぶにはささやかすぎる刹那を霧散させるかのように、慌ただしい馬蹄の音が寄せてきた。斎藤、島田をはじめ新選組の面々が顔を上げる。
彼等の視線の先、味方の陣である中軍山の方角から三騎の騎馬が駆け降りてきた。
先頭で馬を駆るのは、この旧幕府軍全体を指揮する大鳥圭介であった。
大鳥は昼食を摂る新選組の面々を視界に入れると、砂埃を蹴立てるのを好ましく思わなかったのか、少し手前で馬を止めて鞍から降りた。共に来ていた二人の兵に馬を預け、焦りのない歩調で斎藤に歩み寄る。大鳥らしい気遣いを察して、新選組の隊士たちの間には苦笑と安堵の入り交じったような、ぬるい気配が漂った。
しかし、座る斎藤の前に膝をついて視線の高さを合わせた大鳥は、笑顔の内に緊張を滲ませながら厳しい戦況を告げた。
「斎藤君。残念だが八幡前が落ちそうだ。本陣まで撤退してくれ」
斎藤は僅かに目を細めた。
大鳥の言葉は、勝岩の防衛線は持ちこたえたようだが、もうひとつ、母成峠の本陣に向かう街道のほうが破られそうだという意味だ。
勝岩近辺は石筵(いしむろ)川さえ渡ってしまえば本陣までなだらかな台地が続くが、そこに道らしい道があるわけではない。台車に乗せた大砲も運ぶとなれば街道の方が移動は容易く、大鳥は街道を本隊が進むものと想定し、中軍山を中心に両翼の高台に台場を設置し、その前衛に八幡前の陣を置き、更にその前の萩岡に台場を置くという縦深陣を敷いた。
街道を縦に長く伸びるはずの敵陣形に備えるには最適と思われたが──。
既に萩岡は落ちて、今度は八幡前が落ちるという。
斎藤は瞑目した。
おそらく戦力差がありすぎるのだ。
規模が、そして大砲の質が。
新政府軍が有するアームストロング砲の威力は絶大だ。
だが開かれた斎藤の目に迷いはなかった。
「わかりました。八幡前部隊撤退の殿(しんがり)は新選組が務めます」
「いや、それには及ばないよ。八幡前の主力は猪苗代の兵と、伝習隊(うち)の第一大隊だからね。こっちの第二大隊と連携を取りながら上手く撤退するさ」
母成峠攻防戦の総指揮官であり伝習隊の隊長でもある大鳥の、気安い笑みを含んだ言葉に、斎藤の目が再び細められた。
表情の読めないことの多い斎藤にしては珍しく、その目には険が宿っていた。
「……大鳥さん。あんた最初から、俺たちを予備戦力にしてませんか」


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